第二次大戦下に、イタリア海軍の潜水艦コマンダンテ・カッペリーニが沈めた敵国船の乗組員を救助した実話を基に描かれる、海の男たちの誇りと絆の戦争秘話『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』より、エドアルド・デ・アンジェリス監督オフィシャルインタビューが到着した。
■サルヴァトーレ・トーダロ艦長について教えて下さい
彼は強い男だ。彼は強固な敵国船に恐れをなさず無慈悲に沈めるが、無防備な敵はすでに敵ではなく、ただの人間であり、ゆえにそれを助ける。なぜなら真に強い者というのは弱き者に手を差し伸べられる者であるからだ。サルヴァトーレは空と海を統べる不屈の掟を知っている。それは他のいかなる法律をも凌駕するものである。ひとりの人間を救った者は誰であれ、人類の救世主たりうるのである。
■ピエルフランチェスコ・ファヴィーノをキャスティングした経緯を教えてください。彼とはどのように出会ったのでしょうか。
彼のことは昔から知っていたよ。とても優れた役者だし、もちろん私も尊敬しているし、イタリアでは非常に重要な役者だからね。役者として細かく役作りをしていくタイプなんだ。だけどそれが理由ではなくて、まだ彼にはスクリーンで見せていない顔があるのではないか、まだ探索されていない部分があるのではないかと思ったんだ。それは「自分が捨てられた」という感情で、それを表現してほしかったから、今回の旅に一緒に出ようと思ったんだ。
■登場人物の心象描写が詩的でした。どのような意図でそのような演出・脚本にしたのでしょうか。
サルヴァトーレ・トーダロ艦長の言葉というのは実際に彼の娘宛てに出された手紙を参考にしたんだ。それを読むと、考えを表現するときには非常に洗練された言葉を使うということがわかる。だから話すときと考えるときの言葉のニュアンスが違うということを表現したくて、詩的な言葉に決めたんだ。
■イタリア海軍全面協力と伺いました。具体的にどのような協力を得たのでしょうか。
最初に考えたのは、当時の潜水艦の中での生活の仕方を再現したいということ。それは本物の軍隊と同じようでなければならないということで、言葉とか体の動きとか、すべてが海軍のやり方に沿ったものでなければならない。撮影中は常にイタリア海軍の人間が私のそばにいてチェックしてくれたんだ。実際にターラントの海軍基地で撮影できたし、アーカイブも実際に見せてもらった。潜水艦を再現するにあたっていろんな資料や写真を提供してくれた。かつての潜水艦の乗組員の人たちにも話を聞いて、彼らの実体験を反映させたんだ。海軍の協力がなかったら成立しなかったよ。
■チネチッタに実物大のコマンダンテ・カッペリーニを建造したことについて伺います。現在のイタリア映画では珍しいことなのでしょうか。製作費はどのくらいだったのでしょうか?
珍しいよ。そもそも潜水艦映画はイタリアでは70年前に作られたっきりだと思う。
■艦体に描かれたドクロマークにはどのような意味があるのでしょうか。
潜水艦の乗組員は他の軍隊と違ってアナーキーなところがあった。階級はあるが、狭い空間で生活することで皆の距離が物理的にも精神的にも近かったんだ。艦内は暑いので制服も脱いでいた。そんな状況において、アナーキー精神も相まって海賊のような心持だったこともあって、その象徴であるドクロを掲げていたんだ。
■カッペリーニはドイツの、そして日本の潜水艦になって紀伊水道で水没処分されました。かつてのイタリア人の乗組員の中には、日本でその生涯を終えた方もいると聞きます。日本にゆかりの深いこの艦の映画を、日本の観客にどう見てもらいたいですか?
日本とイタリアは近いと思う。そうは見えないけど、違いのなかで共通するようなものがある。イタリア人が日本に来るといい雰囲気の優しい思い出を語っている。相通じ合うところがあるんじゃないかと思っているよ。日本は海に囲まれた国だし、海の掟みたいなことがよく知られているんじゃないかと思う。戦争のとき、平和のとき、そういうのはあまり関係なくて、海の掟が心にしみついていると思う。人命救助の重要さは世界中で認識されていると思うけど、特に海を知っている日本の人たちにはより理解してもらえるんじゃないかな。
■日本の観客にメッセージをお願いします。
イタリア人だとか日本人だとかはあまり意味がない。特に港が閉じられているときは意味がない。港はオープンであるべきだし、それは必要なこと。その時にアイデンティティがはっきり表れてくるから。
7月5日(金)より、TOHOシネズ日比谷ほか全国公開